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国道418号 恵那〜八百津

国道418号は、そもそも全線がどのように引かれているかを見た時からまず変だ。岐阜県本巣郡根尾村と長野県下伊那郡南信濃村を結んでいるのだが(→注)、途中岐阜市の北をまわり、関・美濃加茂・恵那などを通過、岐阜県南東部から長野県最南端部に入り、天竜川流域へと至っている。地図でその道筋をたどれば、全線としての存在意義は疑問視せざるを得ない。

しかし、この国道の真髄をその変なルーティングに求めようとするなら、それは間違いだ。何とこの国道には、年間を通じて通行不能、しかも放置されているため荒れ放題になっている箇所があるのだ。それは八百津町から恵那市にかけての木曽川沿いの区間。果たしてその惨状とは如何なるものであろうか。その実態を調査するべく、 2001年5月19日(土)恵那市側からこの国道へと入った。(車はレガシィ。)

《 恵那市、国道19号交点から武並橋までの区間 》

八百津までの距離は迂回路経由? 木曽川まであと少しの所に狭路あり。 といっても、激細というわけではない。

国道418号へは恵那市の国道19号との交差点から入った(名古屋方面より)。といっても、最初は気付かずに立体交差を越えてしまう。引き返し「国道418号 山岡」と出ている分岐へ。

八百津方面へと走り出してすぐに現れた「八百津 41km」という標識にその存在意義を疑うも(飯地というのは国道418号の迂回路として指定されている県道の途中の集落ではあるが。)、この時点では2車線の道、その先に待ちうけているものを想像することなど不可能だ。

木曽川沿いに至るまでは、ほとんどの区間片側1車線が確保された道だ。ところどころで中央線が無くなるものの、それも改良工事の進み次第で消え去るのも時間の問題だろう。所々にあった旧道の方には国道標識がまだ残っていた。

《 武並橋から笠置ダム(通行不能区間入口)までの区間 》

×により通年通行不能を示唆。 恵那側の通行不能区間告知板 通行止区間までは大体こんな感じ。
どこにでもありそうな狭い道。 道路幅と車の幅との関係。 離合不可区間は断続的に続く。

橋を渡ったところにある標識は、国道418号の行く先をバツで示して通行不能、迂回路へまわるようにとの宣告。もちろん、そんなものに従うはずも無く、そのまま国道418号を突き進む。 途中道端にいたおっちゃんが、通行不能区間へ吸い込まれていく大阪ナンバーの車を「あほやなあ〜、どうせすぐに引き返して来るんちゃうの?」的な視線で眺めるも、無視。

どこにでもありがちな離合不可な狭路をそのまま進んでいくと関電笠置発電所に至り、そしてすぐに通行止めのバリケードが現れる。ここで車での進行はストップ。

《 恵那市から八百津町にかけて、木曽川沿いの通行不能区間 》

笠置ダムは関電の発電所を併設。 バリケード、通行止区間のはじまり。 車は通行止になる前に入ったのか。
バリケードの奥にあった通行止告知。 右の山側からの土砂崩れ。 路面は完全に落葉に覆われている。

さて、ここで登場願うは、池田(大阪府・居住地)からここまで荷台に載せてきたいつも使っている自転車だ。ここからは自転車で進もうということで、はるばる運んできたのだ。

バリケードの脇を通り、しばらくのあいだは舗装された道が続く。しかしそれも「ここから5500mの区間通行止め」の看板が現れたら、崖から路面上へと流れ落ちた土石類の登場を見る。落ち葉もすごい。(バリケードの奥に通行止めを宣告する看板があるということは、バリケードはある時恵那側へと移動させられたということか。)

落ち葉の敷き詰められた路面に驚きながら進んでいくと、今度は道の中央付近に草が生え出した。わだちの部分以外はもう既に草むら化しつつあるということだ。

遂に道の真ん中に草が生え出した。 車が入れないのでは標識も無意味。 道路の状況はますますひどくなる。
遂に人1人が通れる幅になった。 この先へと国道は続いていく・・・。 けもの道の様相を帯びてくる。

進むにしたがって道路の状況はひどくなる。まさに文字そのままの「酷道」だ。時々現れる標識も、存在価値は全くない。「2.0mを超える車両は入れない」と言われたところで車自体が入れないのだ。

そんなことを思っていると今度は自転車でも進むのがやっとのような状況になってきた。こうなるともう「道路」とは言い難い。「道路」といえば、車が通ったり、人が行き交ったりという「交通」というものがイメージとして連想されるが、ここでは通る車も行き交う人も、その影さえ認めることは出来ないのだ。

まさにけもの道。生い茂る草むらの臭いは青汁を思い起こさせ、気分は良くない。また、あまりの人工物の無さに何かが出てくるような感じがし、本当なら心地良いはずの鶯のさえずりまでが怖く思える。どうしてこんな所に独りで来たのだろう? カラスがあざ笑うかのように頭上で鳴く。

もはや「道路」とは言い難い。 自転車で走れば草が腕をかすめる。 時々現れる橋にのみ文明を感じる。
道をふさぐ岩に驚くも記念撮影。 ここで何故か車とすれ違った。 八百津側の通行不能区間告知板

こんなところは早く抜け出してしまいたいところだが、けもの道はまだまだ続く。少しは名の知れた山は最近の登山ブームで整備も行き届き、それなりの登山道を備えているが、この国道の惨状はまったくもってそれら登山道を超えている。登山道よりひどい国道、国道418号。自然を感じるこの国道は、まさにアウトドア派にぴったりの国道だ。(?)

けもの道の連続を破るのは時々現れる橋だ。さすがに橋の上まで草むらになるほどの放置というわけではないようだ。 (それも、橋の横からの草々の繁茂の様子から言えば、いつの日か草に覆い尽くされる日がくるのだろうかと思ってしまう。) しばらくいくと、道上に大きな岩が落ちているが、これを越すと、けもの道が2つのわだちを持つ道路へと戻る。ようやく文明への復帰だ。

八百津側の通行不能区間のはじめにももちろんのことそれを示す看板はあるのだが、訪れたこの日はバリケードは路肩へとどかされていた。ここにたどりつく前に農作業らしい車をすれ違ったのだが、この車の主が動かしたのだろうか?

《 町道分岐から岐阜県道353号分岐までの区間 》

右:国道、左:迂回路の町道。 路面が荒れていない分まし。 国道マークの×印が哀愁。

恵那方面への通行不能宣告の看板を過ぎ、しばらく行くと右側山の方から同じくらいの幅の道が降りてくる。八百津側から来ると、国道通行不能区間を避けるためにはこの道をあがっていくことになる。

自転車による調査はこれまで。通行不能区間のはじまりから1時間10分の行程だった。通行不能区間の嫌な雰囲気を抜け出し、やれやれと言ったところだが、車を置いてきたために、同じ所を戻っていかなければならない。帰りは写真を撮るということもないので、猪突猛進的に飛ばした結果、行きの30分短縮、40分で戻ることが出来た。ただ、あまりの振動に自転車のスタンドのばねがどこかへ消え去ってしまい、修理代1800円。これは痛かった。

恵那側通行不能区間の入り口からは、今度は車で、国道418号の迂回路として指定されている県道や町道などを通って、また八百津側の通行不能区間の入り口に戻った。迂回路を走るのにかかった時間は約1時間。通行不能区間の自転車1時間10分とあまり変わらない。

国道418号に復帰し、あとは八百津側へと走るのみ。しかし、通行不能区間指定がされていないとはいえ、路面は荒れて走りにくいことこの上なし。もちろんミラーなどなく、また離合できそうなところもあまりない。この日は来なかったから良かったようなものの、もし対向車が来ていたら大変だったかもしれない。

しばらく進み、トンネルを抜け(このトンネルがまた電灯がなく真っ暗で怪しげ!) 、県道353号との交差点に至ればあとは交通量もそこそこある普通の道路になる。しかし、離合不可な箇所は所々に存在し、快適に走れるわけではない。快適に走れるようになるのは八百津の街がもうすぐというところまで待たなければならないのだ。

注:国道418号は「岐阜県本巣郡根尾村と長野県下伊那郡南信濃村を結んでいる」のではなく、正式には「福井県大野市と長野県下伊那郡南信濃村を結んでいて、大野市と根尾村の間は国道157号線との重複である」との指摘を頂きました。(2001年5月27日)