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国道368号 名張〜飯南

国道368号は三重県上野市と同県多気郡勢和村を結んでいる。途中、名張市や美杉村、飯南町などを経由していく国道で、一見三重県内のみかと思われるが、実は国道369号との分岐点、敷津付近で奈良県宇陀郡御杖村を通っている。

この国道、上野市から名張市にかけての区間は走っていないのでなんとも言えないが、地図を見る限りではそんなに狭いところはなさそうだ。それ以外の区間、名張市から勢和村にかけては酷道区間が存在する。その区間とは名張市から美杉村にかけての区間、そして美杉村から飯南町にかけての仁柿峠だ。この2つの酷道区間を2000年7月30日(日)に走った。(車はヴィッツ、友人と2人での調査。)

《 名張市から美杉村にかけての区間 》

比奈知ダムを過ぎると狭くなる。 この近辺、決して狭い谷ではないが、 2車線ではない。 整備はこれから?
所々に待避所。待ってもらったり、 こちらが待ったりしながら進んで行く。 バス路線。ここもバスが通る。

国道165号との交差点を過ぎしばらくのあいだは2車線の堂々たる道が続く。(地図には旧道らしい道が国道368号として書いてあるが、今回は走っていない。以前バスで通ったことがあるが、バスにとってすれ違い困難なところはあった。)

進んでいくと2つのトンネルを過ぎ、「比奈知(ひなち)ダム」の湖の横を通ることになる。このダム、非常に新しいようで、1998年版の地図では載っていないものすらある。ダム湖に埋まってしまったであろう旧道の代わりに、非常に新しく走りやすい道が出来ていて、しばらくのあいだは快調に進める。

しかし、そのダム湖が消えてしまうと、整備されていない道になってしまう。舗装は悪くないが、幅が広くなったり狭くなったりするのだ。所々にある離合困難箇所ではこちらか対向車かが待たなければならない。

バスでここを通った時、運転手は結構大変そうだった。市街地で走っているのと同じような大きさのバスだったが、反対方面行きのバスと無線でやり取りし、どこですれ違うかを決めていた。それもその筈、バス同士がすれ違える場所は非常に少ない、そんな道なのだ。

狭い道、名張川のそばを行くと・・・ 対向車が。 ぎりぎりの所すれ違う。 この道、対向車が結構やってくる。

美杉村に入って、寺垣内から太郎生(たろう)付近では整備された真新しい道を走ることが出来るが、それもすぐに終わってしまう。どうやら整備が進行中のようだ。この国道は狭い谷筋を進むというわけでもないのに、中央線のない区間が続く。まさにこれから整備がなされていく、そんな状態なのだろう。ひと昔前の田舎の国道はこんな感じだったのだろうか、そんなことを思った。

奈良県御杖村に入って国道369号との分岐点で左に行く。この先、中央線がないところもあるが、神経をすり減らすようなものではない。しばらく行くと、JR名松線の伊勢奥津駅があったりするが、鉄道があることからもわかるように、険しい山の中を進む、という感じではないのだ。

(ちなみにこの名松線、松阪から延びてきている。線名の「松」は松阪の「松」からきているのはわかるが、そうすれば「名」はなんだろう ―― 何と、名張の「名」ということだ。どうやら伊勢奥津から名張までの区間は幻となったらしい。名張まで行くとなると、通ってきたこの国道368号と同じ区間をたどることになろう。通ってきたところに鉄道の姿を重ね合わせるとどことなく不思議な感じがする。もし鉄道が開通していたら、この国道はもっと整備がされていたのだろうか。それとも、鉄道開通を断念したようなところだから、今になってようやく整備がはじめられるといった感じなのだろうか。いろいろな考えが頭を巡る。 )

《 美杉村と飯南町との境界 仁柿峠 》

大型車、通行困難ではなく通行不能。 両脇の白線が非常に目立っている。 しかし、その白線も消滅する。
仁柿峠へ向かって道路は進む。 峠を越えて、飯南町側が狭いようだ。 飯南町側へと下っていく。

国道368号をさらに勢和村方面へと進んでいくと、同じような看板が目に付くようになる。それは、この先の仁柿峠が幅員狭小のために大型車が通行できないというものだ。看板を幾つか見た後もしばらくは2車線の道路が続く。しかし、ある地点を境に道は一気に狭くなる。酷道区間の始まりだ。

最初は両脇に白線も引いてあるが、それもいつのまにか消えてなくなる。それでも所々道路改良工事がなされていて、整備のやる気はあると見える。そんな雰囲気の中進んでいくと、特に険しい登りがあるわけでもなく峠に到着する。確かに狭くはあったが、取り立てて言うほどのものではなかった。そんなことを思っていると、峠を下りはじめるところに看板が登場。その看板によれば、幅員狭小区間はこの峠から飯南町側へ下っていく区間らしい。

車1台には十分だがすれ違い困難。 うっそうと茂る木々の中、という感じ。 標識を取りつける棒が長過ぎたか。

峠への登りは緩やかなものだったのに比べて、下りは非常に急だ。といっても、道自体は急ではない。地形の急勾配を、幾つものカーブによって山肌にへばり付くような感じで克服するのだ。

曲がりくねった道を下りていくと、時折対向車に遭遇する。離合不可区間はかなりにわたって続くが、もちろんすれ違い場所は造ってある。しかしこの日は、1台をやり過ごして進もうと思ったらまた次の対向車がやってくる、といった感じで3回か4回も同じ所でバックを余儀なくされた。これは運が悪かった、としか言いようがないだろう。この峠を挟む区間全体にわたってみると、交通量が決して多いというわけではなかったのだ。

待避所毎にナンバーがふってあって峠側からは逆に数えながら下りていく。その後はバックを何回もやらなければならないということはなく、順調に下っていけた。

この後、国道368号沿いに勢和村へと進んだが、この先に取り立てて言うほどの狭い区間はなく、順調に進んで行けた。飯南町と勢和村のあいだの桜峠もたいしたことはない。平地をしばらく進んで行けば、国道42号線もすぐだ。