国道の真髄を知る > [酷道実走調査] > [国道360号 天生峠越え]

国道360号 天生峠越え

国道360号は富山市を起点にもつ国道だ。国道41号と重複して南下し、婦負郡細入村において単独区間に入る。その後、岐阜県吉城郡河合村・大野郡白川村間を天生峠で越え、そして岐阜・石川県境分断区間を白山スーパー林道で繋げば、最終的には石川県小松市に至ることになる。 ――と、書いたところで、この付近・沿線に住んでいない限り、どのようなルートになっているのかは判りにくい。要するに、全線としての存在価値はない訳で(富山と小松を行き来するなら、国道8号という素晴らしく整備の行きとどいた国道がある。)、この道も他の「酷道」と同様に、その中の一部区間を結ぶものとして、いくつかの河川流域をまたいで走る、山越えルートとしての存在なのだ。

《 白川村荻町(国道156号交点)から天生峠へ 》

国道156号線分岐。左は砺波・高岡。 国道360号線は分岐点を右へ行く。 入ってすぐから中央線なし。
通行止多発区間。この日はOK。 白川郷なだけあって合掌づくりの家。 国道から少し入った展望台から。

この日は実はこの道を走る予定はなかった。しかし、国道156号を荘川村から北上している時、だいたいなら出ている「国道360号天生峠通行止」という電光表示がない事に気付いた。今回レポートする、この国道360号天生峠というのは通行止めが多く、走り抜けることが滅多に出来ない。つまり、この機会を逃すと、この付近に住んでいるわけでもないし、次にいつ来れるかわからない。そんなわけで急遽予定変更。以下、2001年10月14日(日)、キューブ(日産1300cc)での調査となった。

国道156号は白川郷の荻町集落をトンネルでパスするのだが、そのトンネルを抜け、交差点を左へ折れたすぐのところに国道360号との分岐がある。信号がないので少々わかりづらいかもしれないが、交差点の隅に、上に並べた6つの写真のうち、上の段真ん中のもののような小ぶりの標識があるので、注意すればわかるだろう。

白川郷の写真といえば絶対に出てくるものとして、高台から集落を見渡したようなアングルがあるが、これは国道360号をすこし登ってから右へ折れ、しばらく行ったところにある。この分岐付近までは開けていて、狭いといっても取りたてて言うほどのものではない。その分岐を越え、本格的な登りにかかってから、狭さを感じさせるような場所が現れる。

大型「通行困難」でなく「通行不能」。 この付近、狭い所でも最も狭い感じ。 その他はこれくらいの幅が多い。
険しい山を切り拓いた様子が窺える。 天生峠へと順調に進み行く。 この写真は反対向き。紅葉きれい。

この日は下界は霧に包まれていた。それをまさしく「九十九折れ」という感じで高度を稼いでいくと、下界にたち込める霧を抜け出る。ふと、下の方に目をやると、これまでに進んできた細い道がくねくねと斜面を辿る様子が見える。しかしそこで、顔を上にあげると素晴らしい景色が――。白山の北に連なる山々が、頂上付近にすこし雪をかぶり、雲海の上に頭を出している。また、雲海と稜線のちょうど真ん中くらいには白く一筋の雲がたなびき、非常に幻想的であった。

さて、そんなわけでこの日はカメラマンが三脚を立てている姿が随所に見られた。ただし、すこし広くなっているところは彼らの車がすべて占拠。朝も8時前で交通量が少なかったからいいようなものの、交通量が増えたら離合に支障をきたしそうだった。(上の写真を撮ったところはカメラマンが大勢いたところからはかなり下の方で、広めの道が続くところだったことを付け加えておきます。ベストな撮影ポイントではなかったのでしょうか。)

《 天生峠から河合村へと下りる 》

白川村側から峠を撮ったもの。 泉鏡花「高野聖」ゆかりの土地。 河合村側から峠を撮ったもの。
熊が出るのだそうで・・・。 峠を越えしばらくはさほど狭くはない。 しかし、少し行くと狭い区間の登場。

白川村側の急斜面を登りきると、平坦な部分に出るが、そこまできたら峠もすぐだ。しばらく走って左へ大きく曲がるとこの区間のピーク、天生峠(あもうとうげ)に到着だ。峠を河合村側に抜けると驚くことにかなり大きめの駐車場が作ってあって、白川村側から登ってきた雰囲気からすると大いに驚く。詳しくは覚えていないが、バスも入っていたような気がする。それで、どうしてそんな駐車場があるかだが、峠の南に天生湿原というのがあるからで、この日も多くの中高年登山者の姿が見られた。(花には詳しくないので、見頃の花があったのかどうかは判らない。もしかしたら紅葉狩りという可能性もある。)

こちらはこの後の予定の関係上、多少後ろ髪のひかれる想いのしながら、河合村側へと下っていく。河合村側は白川村側と違ってすぐに下りにかかるが、最初のうちはあまり勾配もたいしたことなく、幅も1.5車線ベースで進んでいく。ところがしばらく行くと、急勾配の登場。幅も狭くなる。

急斜面を下る。上に先ほど通った道。 幅員狭小区間は断続的に続く。 雲海を横に見ながら・・・。
この道、結構新しげな標識多いです。 雲の中、下り行く。 写真でもわかるとおり、舗装は良い。

河合村側も白川村側と同様に、一気に高度差を稼ぐ急勾配の道だ。その急勾配区間は道幅も狭く、運転には気を遣いたい。しかし、とりたてて言うほどの狭小区間は、長さとしてはあまり続かない。河合村側を下っていくと、岐阜県道75号線清見村方面への分岐の案内が出るが、そこに至れば酷道区間は終了する。地図を見てみれば、峠からその分岐までと、分岐から高山本線角川(つのがわ)駅までは同じような距離だか、酷道区間を終えた後者の方は驚くほどの短時間で結ぶことができる。

さて個人的な話で恐縮だが、1996年だから今となっては5年前、家族で白川郷に来た時にある事情で高山へ急がなければならなくなった。普通なら国道156号を荘川まで行き、その後国道158号で高山へ抜けるのがスジであろう。しかし、鉄道駅まで行けるのならそこまで行ってしまい、そこから高山まで行くのがきっと早いに違いない。そこで、地図を見てここから一番近い駅である高山本線角川駅へ抜けようということになった。

そこで白羽の矢が立ったのは(というより、それしかないが)タクシーという交通手段。ところが、タクシーにこのルートで角川駅へと抜けてくれるよう頼んだところ、道路事情があまりにも悪すぎるという理由で、なんと拒否。(車が傷つくから、というものだったと思う。) そのような事情があったので、どんな道なのかとある種の期待をもって通ったのだが、案外拍子抜け。一番最後の写真の下にも書いたが、この道、幅は狭いが舗装は良い。この5年のあいだに舗装事情が大きく変わったのかもしれない。