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国道308号 暗峠越え

国道308号の奈良県−大阪府間の峠越え、「暗越(くらがりごえ)」は古くからよく使われた歴史的に有名な街道だ。しかし、この道は現在では一部の人間にとって、あまりにも有名な道路となってしまっている。なぜなら、この道は国道に設定されているにもかかわらず、その一般的なイメージとは裏腹に、どうしようもなく貧弱な道路だからだ。「酷道」を語るには、この道を体験せずには語れない、と言っても過言ではない、そんな道なのだ。

2000年4月8日(土)、前日果たせなかったこの区間の調査のため、近鉄南生駒駅にやってきた。この日も天気はよく、絶好のハイキング日和だ。旧国道168号を少し南へ行き、竜田川を渡ったところで今日の酷道調査の開始だ。今日も徒歩で調査を行なう。

※ 写真の下の説明書きに「大阪方面」などとあるのは、どちら側を向いて写真を撮ったかです。

近鉄南生駒駅付近。(大阪方面) 本当に?? (大阪方面) 西行き一方通行。(大阪方面)
ひし形が大きく見える。(大阪方面) 横断歩道、3つだけ? (大阪方面) 勾配がきつくなっていく。(大阪方面)

竜田川を渡り、旧国道168号との分岐からまず怪しさが漂う。道が非常に狭いのだが、それ以上に「この先3.3km、通り抜け不能。幅員1.3m。」 の標識が目に飛び込んでくるからだ。それにしても、本当だろうか? 多くのサイトによるレポートでは通ったというものばかりだが。いずれにせよ、実態は3.3km進めば判る。

ほんの十数メートル進み、現国道168号との交差点を過ぎると、「西行き一方通行」の標識が目に入る。振り返れば反対がわに「車両進入禁止」の標識。どうやら、旧国道168号線との分岐からのようだ。

小学校の横を通り、狭い道をしばらく住宅街を進んでいくと、一方通行区間は終わる。といっても、狭い区間が終わるわけではない。さらに進むと、次第に登りへとかかっていく。なかなかきつい勾配だ。上の写真、下の段の一番右端のものでお判りいただけるだろうか。

舗装、つぎはぎだらけ。(大阪方面) 麓の住宅街、終わり。(大阪方面) 林の中を進む。(大阪方面)
結構新しい国道標識。(大阪方面) ごく最近整備されたよう。(大阪方面) 峠直前で2車線。(大阪方面)

住宅街を急勾配で抜けると林の中へと入る。その林も長くは続かず、少し行くと右手に国道整備の工事を見て、国道標識が左折を告げたら一気に開ける。なぜか2車線の道路だ。この2車線の道路はしばらく続く。そして、次の分岐を左へ入ると、国道は中央線が現われたり消えたりしながら上っていく。

結構登っているにもかかわらず道路脇には「通学路」の標識が現われ驚くのだが、途中で通った小学校まで通うのだろう。歩くのだろうか。行きは良いが帰りは非常につらそうだ。スクールバスか何かがあるのだろうか。

さて、結構上の方まで家が立っている。また、道がかなりの区間にわたって整備されていて、峠の近くまで2車線の道路があるのも驚きだ。

ちなみに車の量だが、あまり通らない。むしろこの日はハイキングやサイクリングの人とすれ違う方が多かった。

上、信貴生駒スカイライン(大阪方面) ここが最も狭いのか? (大阪方面) 暗峠、奈良県側から。(大阪方面)
暗峠、大阪府側から。(奈良方面) 車が走るのが国道。(大阪方面) 日柄、交通量が多い。(奈良方面)

信貴生駒スカイラインを走る車の音が聞こえれば、峠はもうすぐだ。そのスカイラインをガードでくぐれば、暗峠到着。峠はハイカーで賑わっていて、茶店のようなものもあり、活気がある。峠にはふもとから約1時間(徒歩)の道のりだった。

さて、問題の「幅員1.3m」。 峠の大阪側を見ても、奈良側を振り返ってみても、道の幅が1.3mとは思えない。また、しばらく峠に佇んでいても、両方から車が峠を越えて行く。1.3mの幅なら車は通行不能だ。しかし、現実には車が通って行く。「1.3m」はどうやらこけおどしのようだ。それとも、昔は本当に1.3mの幅だったのが拡幅され、にもかかわらず、標識だけ残っている、というのも考えられるが、謎だ。

峠でしばらく休み、暗峠の歴史などを書いた看板を読んだりして過ごした。それにしても結構開けていて、「暗峠」の名に不釣合い。この道が出来た頃には、暗がりの中の峠だったのだろうが。

わだちに狭さが窺える。(大阪方面) 大阪側へと下っていく。(大阪方面) 峠方面を振り返る。(奈良方面)
2台が行くのが国道! (奈良方面) 一気に下りにかかる。(大阪方面) 狭すぎるわけではない。(奈良方面)

峠で休んだ後、大阪側へと下ることにした。大阪側は奈良側とうってかわって、幅員狭少で勾配もさらにきつい。そんな状態の道だが、この日は気候もいいために出かける人も多く、結構な量の車がこの道にやってきていた。

好き好んでこの道を走りに来た人も、もしかしたらいたかもしれないが、多くは間違って迷い込んできたのだろう。この道の状態を知っていて、わざわざ桜のシーズンに来るというのは結果が見えている。案の定、離合不可区間で混乱が起こっていた。

国道とは思えない、狭く、そして急勾配の道は続く。またカーブもきつい。多くの車がタイヤをスピンさせながら登っていく様は、この国道の異常さを物語る。奈良県側も確かに急勾配で、幅員も狭かったが、こちら大阪府側にはかなわない。それもそのはず、奈良県側は峠近くまで家々が立ち並んでいたが、大阪府側には峠付近を過ぎるとかなり下まで家がない。異常気象時の通行止め区間も峠を挟んでいるわけではなく、峠から大阪府のふもとにかけての区間となっているのだ。

凍結時はどうなる? (奈良方面) 阪神高速が街を貫く。(大阪方面) 麓、枚岡公園の中、桜。(大阪方面)
住宅地へ入っていく。(大阪方面) 幅狭少、西行一方通行。(大阪方面) 酷道区間も少しで終了。(大阪方面)

大阪府側を下っていくと、ふもとの街並みが見える。阪神高速が街を貫く様子が印象的だが、この日は雨が降ってから大分経つので、ほこりが空を舞っているらしく、遠くまでは望めない。残念だ。

国道308号は、大阪側をふもとまで下ると、枚岡公園内を走る。ハイカーや、花見の人々で賑わっている。そんな中をしばらく行くと、「左に行けば近鉄枚岡駅に出る」という標識が出る。多くの人はそれに従ってそちらの方へ進むが、こちらは国道308号を辿るためそのまま直進。一気に人が減った。

少し下るとまたも西行き一方通行区間。住宅地の中を縫うように国道308号は走るのだ。最後にしてまたも狭い。しかしその酷道区間も、近鉄電車の走る音が聞こえるようになれば終わる。

車が出てきたのが国道。(奈良方面) 一方通行の案内板。(奈良方面) ようやく国道標識が・・・。(大阪方面)

酷道区間も終わり、近鉄電車の線路をくぐると道も2車線になる。そして、忘れていた頃に国道標識が現われ、国道であることを主張しだすのだ。

このあとは近鉄瓢箪山駅まで歩き、この日の酷道調査を終わることにした。ちなみに、南生駒駅から約2時間。思ったよりは遠くない。

以上、国道308号、奈良から大阪までの酷道区間を、2区間に分けてレポートした。「奈良−生駒区間」と「暗峠区間」を比較してみると、やはり、大阪側の異常な急勾配からして、「暗峠区間」の方がひどさは勝る。しかし、日の違いもあるかもしれないが、「暗峠区間のほうが交通量も多く、また峠の奈良県側では整備も進んでいるようであった。このため、鄙びている度合いでいけば、「奈良−生駒区間」の方が勝っている。

今回は徒歩での調査となったが、この国道のひどさは大阪側の急勾配を車で登ってこそわかったのかもしれない。それほど大阪側の勾配のきつさは異常だった。

《 後日、車で大阪側から奈良側へ抜けました 》

2000年7月30(日)、大阪側から奈良側へとヴィッツで抜けました。この日は非常に暑く、勿論のことクーラーをきつめにつけていました。このような状況下、1000ccのヴィッツには大阪側からの急勾配はつらかったのか、ロー(AT車)でアクセルをベタ踏みしても全然進みません。歩く速度より遅いくらいでした。 仕方がないのでクーラーを切ったら、不満のない程度に登りました。

排気量の少ない車にとってクーラーがいかに負担となっているかが身にしみて分かったのですが、それでもやはり、大阪側からの急勾配が異常だということも登らなかった大きな原因となっているでしょう。(ちなみに、乗っていたのは2人です。)

《 後日ふたたび、車で大阪側から奈良側へ抜けました 》

2003年9月のある日、大阪側から奈良側へとレガシィ(MT車)で抜けました。1800ccなのですが、大阪側からの急勾配区間は ほぼ1速の半クラッチ状態を余儀なくされました。さらには、「2台が行くのが国道!」の写真の先から広場まで延々バックすることとなり、 かなり冷や汗をかきながら峠越えをする羽目になりました。