> [酷道実走調査] > [国道308号 奈良〜生駒]
国道308号は、大阪と奈良を結ぶ国道だ。古来よりその名を「暗越(くらがりごえ)奈良街道」と呼ばれる、歴史的には非常に重要な道となっている。それというのも、大阪と奈良を最短距離で結ぶ街道だからだが、今となってはその役目を別の2つの道路に譲ってしまい、実態としてはハイキングコース、またはそれ以下の重要度しかもたない道に成り下がってしまっている。
このために、道幅や整備の度合いはどうしようもなく貧弱なもので、間違ってこの道で大阪から奈良へ(もちろんその逆も)抜けようとすると痛い目に遭う。このサイトの趣旨のひとつが「国道のイメージをくつがえす、どうしようもない酷道をレポートし、間違ってこれらの道にはまり込んでしまう人々が減ることを願う。」であるからには、この道ははずせない。
※ 写真の下の説明書きに「大阪方面」などとあるのは、どちら側を向いて写真を撮ったかです。
近鉄尼ヶ辻駅付近。(奈良方面) | ここから徐々に狭く。(大阪方面) | バスが来るのが国道。(奈良方面) |
国道側に赤点滅信号。(大阪方面) | 直進国道の行先不明。 (大阪方面) | 畦道を整備しただけ? (大阪方面) |
2000年4月7日(金)、国道308号の酷道調査を行なった。車を所持していないため、いつもはレンタカーを借りて出かけるのだが、今回の調査は徒歩ですることにした。同行友人も見つからず、ひとりで運転しながら写真を撮るといったことは困難だ。また、「スーパーマップル」(昭文社)に「車両通行困難」の文字が見えることから、一応大事をとることにもした。ともかく、気候もいいので、いいハイキングになれば、ということでもあった。
調査は奈良側から大阪側へと向かうことにした。まず、近鉄尼ヶ辻駅に降り立ち、駅をすぐ出たところの道を西へと向かう。その道が国道308号なのだが、既に中央線はない。幅自体は十分なのだが、駅周辺ということもあり歩行者などでごちゃごちゃしている。また踏切もあって長めの渋滞となっていた。
駅付近の喧騒を抜け、しばらくいくと景色は急に田園風景となる。道路は少しの間2車線になるものの、それもすぐに1車線の道路に戻る。このあたりはバス道でもあり、狭いところではバスを待ったり、バスが待ったりしなければならない。そんな状態が続く。
旧街道らしい雰囲気。(大阪方面) | すれ違いは不可能。(大阪方面) | 右上に控えめな標識。(大阪方面) |
国道とは思えず。(大阪方面) | 左下には第二阪奈。(大阪方面) | 奈良方面はここを左へ。(奈良方面) |
田園風景が尽きると、登りにかかる。登りにかかると沿道の建物が、いかにも旧街道といった感じで、趣深い。しかし、幅ももちろんのこと旧街道らしく狭い。まず離合不可だ。全然国道らしくないのだが、ときどき姿をあらわす国道標識によって、この道が国道であることに思いが至る。
沿道に建物が並ぶ区間を過ぎると一気に寂しくなる。両側にフェンスが立っていて、不法投棄対策だとは思うが、これが寂しさに加えて怪しさまで醸し出す。惜しむらくは国道標識がないことだ。そのフェンス区間を過ぎると、第二阪奈道をオーバークロス。あまりの造りの差に言葉はない。
第二阪奈をオーバークロスしてしばらく行くと左から来た道と合流するが、大阪側から奈良側へと国道308号を辿ろうとするなら、この交差点は要注意ポイントだ。道なりに行くとこの道の方(合流する別の道)に行ってしまうのだが、標識などなく非常に分かりづらい。
住宅地の中をひっそり。(大阪方面) | 軽自動車でこんな感じ。(大阪方面) | 追分付近の様子。(奈良方面) |
こんな所では離合不可。(大阪方面) | ここだってもちろん国道。(大阪方面) | 分かりづらいが下り。(大阪方面) |
追分付近では、またも旧街道らしい建物群の中を進む。旅人が道中の安全を祈願したであろう神社も残っているが、残念ながら今となっては訪れる人も少なそうだ。
さて、追分を過ぎると山の中へと入る。道は非常に狭く、時々路肩の草むらがタイヤの跡によってなくなっているのが妙に印象的だ。無理矢理にすれ違おうとしたのがわかる。進んで行くと所々に広いところはあるが、空き缶やら使用済みのゴム製品などが落ちていて非常に汚い。不法投棄もあちこちで見かけた。
「子供の森」への分岐までは下っていくが、そこを越えるとまた登りにかかる。結構なのぼりだが、あまり長くは続かない。「榁ノ木」という地域だが、そこの峠を越えて、生駒側への下りが始まる。下りもなかなかの勾配だ。1台の車とすれ違ったがかなり苦しそうに坂を登っていった。
不法投棄が目立った。(大阪方面) | 生駒方面へと下る。(大阪方面) | 生駒山方面を望む。(大阪方面) |
大阪方面、ここを左折。(大阪方面) | 昼下がりの風景。(大阪方面) | 国道は踏切を渡る。(奈良方面) |
生駒側へ下る途中、竜田川流域の眺めがよく、ほっと一息つけるが、相変わらず不法投棄のためにその景色も台無しだ。狭い道はさらに続いていくが、生駒山が目の前に、そして第二阪奈が右手下の方に望めたら、その狭い区間もひとまずは終わりを告げる。何の工事かは分からないが、そこへ出入りするトラックのためであろう、2車線の快適な道路に変わるのだ。
さて一旦坂を下りきり、南北に走る道に合流すると、少し北の方向へと進む。国道308号を辿るには、大瀬中学校の北にある交差点を左に入ることになるが、この交差点には信号はなく、また標識も何もないので、要注意だ。うっかりすると交差点があることさえ見落としてしまう。
その交差点を過ぎるとまた狭い区間に入る。住宅街の中を走る道路で、完全に生活道路だ。大人1人と子供2人が前を下っていったが、この光景を後ろから見る限り、この道が国道であることになど思いが至るはずもない。
しばらく行って、踏切の音が聞こえてくると、この区間(奈良−生駒)も終わりだ。非常に小さな踏切で単線の鉄道を渡ると、目の前には竜田川が流れている。ふと後ろを振り返ると、電信柱の中ほどで国道標識が自己主張しているが、なんとも言えず寂しげだ。
国道308号は大阪側へとまだまだ続く。しかしこの日はこのあとで友人と会う約束があったので、ひとまず調査は終わり。結局この区間は2時間ほどの徒歩調査で幕を閉じた。また明日来ようと思いつつ、近鉄南生駒駅からこの地を去った。