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国道25号 非名阪

全国にあまたある国道の中、2ケタの数字をもつものは、国家の交通の基幹を担うものであり、高規格であるべきだ。それゆえ、「酷道」がその中に含まれるとは到底考えられない。実際、今ここで取り上げようとしている国道25号も、起点の四日市市から終点の大阪市まで普通に辿ってみたならば、「酷道」には出遭わない。それどころか、東名阪自動車道亀山ICと西名阪自動車道天理ICのあいだを結ぶ、通称「名阪国道」は、一般道としての存在であるにもかかわらず、もはや高速道路といって良いほどの造りをしており、2車線あるうちの右側追越車線は100km/hを超える速度で流れていることも往々にしてある(法定速度60km/hです)。

ところが、地図をよくよく見てみると、その「名阪国道」に絡み合うようにして、同じ「25」という数字が付された細いラインが引かれていることに気づく。これこそ、今回ここで取り上げる国道25号「非名阪」だ。基幹国道としての役割は「名阪国道」が担っており、全線を走りぬける意味は皆無だ。そのため、整備が止まっているからといって、ことさらあげつらう事はないのだが、国道として指定されている以上、ここはひとつ走ってみることにしよう。

《 奈良県天理市から三重県上野市へ 》

どこでもありそうな住宅街の雰囲気。 ふと見れば、電信柱に国道標識が。 わだちから道幅が窺い知れる。
中央線のない所はこれ位の幅。 畦道を、少し広げて舗装したような。 横断歩道の白いラインが4つだけ。

ところで、国道25号「非名阪」という呼称だが、高規格の「名阪国道」の亀山ICから天理ICまでに対応する区間の、「名阪国道ではない国道25号線」ということで、そのように呼びならわされている。意味の区切れを強調するなら「非‐名阪」というふうになる。

今回の調査は、2002年1月4日(金)、友人の車(カローラ II 1300cc)に便乗し、向きは天理から亀山へと行なった。時間帯は13時半(天理)から15時半(関)にかけて。「非名阪」へは、天理市市街地の東端、布留交差点から入った。この付近、天理ダムまでは布留川に沿って、旧道と新道との2つが存在するが、今回は布留交差点からの旧道を走ることにした。もちろんその旧道も国道25号の指定。雰囲気はどこにでもありそうな住宅街のそれだ。

上の6つの写真は、「名阪国道」針ICまでに対応する区間ものだが、写真は狭いところばかりを集めたものであり、片側1車線確保、中央線のある場所も少なからず存在する。

何と国道本線に「止まれ」の標識。 左に名阪国道。段違いの造りの差。 ここもわだちから道幅が推測可能。
天理→亀山の場合、ここを右折する。 三重県に非常に多いステッカー標識。 この付近を過ぎれば、一気に開ける。

針ICを過ぎ、「名阪国道」をくぐってしばらく行くと、国道25号「非名阪」は県道に突き当たる。ところが、国道本線の方に「止まれ」の標識があって一時停止を求められてしまう。このあたりにも、この「非名阪」を全線走破する事にたいする需要のなさが伺われる。因みに、夜になると、針ICの北、国道369号との交点も赤色点滅信号となり、番号が若いにもかかわらず、完全に虐げられてしまっている。

さて、「非名阪」は小倉ICのところでもまた「名阪国道」をくぐり、亀山方面へと進むわけだが、反対方向から来た場合、ここはミスコースポイントだ。亀山方面からきた場合、「名阪国道」をくぐる手前に左側、「名阪国道」の横へのぼる道との分岐があるのだが、そちらのほうが広いために、間違ってそちらへ進んでしまう。要注意だ。

奈良県と三重県の県境は、名張川にかかる五月橋だ。ちょうどここには「名阪国道」にも五月橋ICがある。ところで、この付近ルートがわかりづらい。五月橋ICまで800mだというところに案内標識が出るが、その標識にあまりにも多くの情報がつめこまれていて、該当地に辿りついた頃には忘れてしまっている。国道25号「非名阪」を亀山方面へと辿るならば、とにかく、上の6つの写真のうち左下の交差点まで行って、その右横の写真にある鉄橋を渡ればいい。間違っても途中左側にある、のれん付きホテルに迷い込まないように。

上野市付近の盆地に出て空が一気に広くなれば、しばらくはとりたてて言うほどの「酷道」はない。時々中央線がなくなる区間もあるが、それもすぐに終わり、おおむね中央線の存在する片側1車線が確保された道となる。

《 三重県上野市から三重県鈴鹿郡関町へ 》

天理→亀山の場合、ここを左折。 天理方面、ここを右折。左と同地点。 服部川を服部橋で渡る。
天理方面、名阪国道手前を右折。 (左の続き)名阪国道出口の右へ。 天理→亀山へは、ここを右折。

国道25号「非名阪」を忠実に辿ろうとする時、上野市街地において厄介なのはその道幅ではない。ややこしいコース取りだ。天理方面から来た場合、まず八幡交差点で国道368号と出会う。この交差点を左折し北進、その後近鉄伊賀線の踏みきりを越えたらすぐの交差点を右折する。ここまでは案内標識もあって難しいことはない。問題は、国道25号は、踏みきり後の右折で重複することになった国道163号から、1.3km後に北へと分かれるのだが、その交差点には何の案内もないということだ。逆方向、亀山方面から来た場合もこの交差点には何の標識もない。

そこで、天理→亀山の場合、上に6つ並べた写真のうち、左上のものを見て頂きたい。道の右側手前にエネオスのある交差点が、左折ポイントだ。反対に、亀山→天理の場合は、その右の写真に写っている交差点で右折ということになる。この手前で上り坂になっていることも記憶に留めておくと、一層分かりやすいだろう。

上野市から10数km東進の区間は、片側1車線確保の走りやすい道であるが、「名阪国道」伊賀ICの所に来ると、またミスコース要注意ポイントだ。亀山方面へ向かう場合、右側から「名阪国道」からの出口レーンが合流、すぐのところ、モービルのある交差点を左折、そしてまたすぐの交差点を右折する。以上、亀山方面へと進む場合はあまり問題はない。

厄介なのは、亀山方面から天理方面へと進む場合だ。天理方面へはモービルのある交差点を右折することになるわけだが、一見すると「名阪国道」からの出口しかないように思えてしまう。もちろん出口には進入禁止の標識があるわけで、これがさらに不安をかきたてる。昼間なら出口の右側横へと続く道路を見つけるのはそう難しいことではないが、夜になると交通量が少ない関係上、非常に分かりづらい。

関町加太集落付近、狭路が続く。 集落内は改良も困難なのか。 標識は、忘れたころに現れる。

伊賀ICを過ぎると、あたりは一気に寂れてしまう。右側にはひとけのない池、そして前方には砕石のために山肌のほとんどが剥き出しになった荒れ果てた山。くぐる線路は単線で、列車が通る気配など全くなく、その寂寥感に輪をかける。

そんな中進んでいくと、先ほど見えていた採石場が左側に現れる。この日はまだ正月休みで稼動はしていなかったようだが、作業が行なわれている日にはこの国道25号はダンプカーがひっきりなしに走るに違いない。そのためだろう、舗装が荒れ果ててしまい、ほぼ未舗装のような状態になっている。乗り心地はお世辞にもいいとはいえない。基幹国道としての役割は既にないとは言え、時々現れる「国道25号」を主張する標識が、その状況にそぐわず非常に滑稽だ。

採石場付近の荒れ果てた光景を後にすれば、今度は関町加太付近では集落内を通るために道幅が一気に狭くなる。道路の舗装状態や道幅の狭さなどを考慮すれば、この付近が、国道25号線「非名阪」の中で、一番ひどい区間だと言えよう。

その集落を過ぎれば、また片側1車線の道が回復する。しばらくいけば、国道1号線に突き当たり、いわゆる「非名阪」区間は終了。「名阪国道」亀山ICから天理ICまでに対応する、「名阪国道でない国道25号」が「非名阪」ではあるが、亀山‐関約5kmは、国道1号との重複であり、その国道1号がかなり整備度の高い国道であるから、「非名阪」の実態としては、関から天理までの区間ということなのだ。